珍念与八郎の 忘れものは「キ」 VOL.1 原子たちの総括

2011年X月X日、待ち合わせ場所は彼が指定した郊外のファミリーレストラン。
今回のインタビューへの意欲のあらわれなのか、彼はすでに来ていて、喫煙席で漫画を読んでいた。
こちらに気付いた彼は、にこやかな顔で手をヒラヒラさせてる。
ぼくは大量の資料の入ったカバンを座席に置き、一拍の深呼吸をして彼を見やる・・
(ただのまなざしではない。彼はすでに、ぼくの中に取り込まれてる)

インタビューは始まった。 長い旅の一歩を踏み始めた。

お待たせしてしまいました。珍念与八郎と申します。

イエイ!総括するぞ!

いきなり総括ですか。

いやまあ、こないだ連合赤軍の映画見たもんで・・ちょっと影響受けたのだ。

ははは、そうなんですか。バダさんずいぶん気合が入ってらっしゃると思いまして・・

インタビューを受けるのが初めてなのさ。こりゃ記念と言えよう。

最初のインタビュー相手になれて光栄ですよ。

我がバンド人生、たっぷり振り返りたいと思っているのねん。
あとついでに、近頃思うことも、ぶっちゃけちゃってもいいかな~

はい、こちらも望むところです。過去も現在も全部含めて、それで総括なんですね。
総括って便利な言葉ですねえ。

まさに便利だ。そして魅惑的。だが!だが、連合赤軍の総括はキビシかったぞ。
ありゃ命がけだな。総括すると最後は死ぬの。ぶるぶる・・怖いねえ~
なのでぇ~オイラもう年だし、そうゆうの体がもたんけん。お手柔らかにたのむぜっ。

いえいえ、元から、そんなつもりじゃ・・
総括、言うほど簡単ではないと、よくわかりますよ。
とりあえずは、ゆるりと総括で行きましょう。
販売促進キャンペーン四半期の総括、くらいな程度で。
こちらとしてもリラックスした話をうかがいたいので・・
しかしバダさん、案外、その、芝居がかってますね・・

う~ん・・

どうしました?

ああ~オレは、オレは、なんて日和見主義なんだ・・・

どうしたのですか、急に頭をかかえて・・そうなんですか?

日和見主義の自分を総括したいのに、日和見主義の自分には総括ができない・・

ええと、ややこしいですね。
私は日和った者で、私自身が日和っているゆえ、日和った私自身の性質をどうすることもできない、
ってことですかね。

うううう・・
それだと余計ややこしく聞こえる・・

そうですかねぇ。これだと、くどくなってしまうのですかねぇ。
でも、今おっしゃられたような論法を、あなたの歌詞などで、よく見受けるのですけど。
かっこいいことはなんてかっこわるいことなんだ、的な。
たとえば、トゲオの曲ではないけど「桃井震怒郎の脱衣麻雀」とかが、

くだらないことはもうやめて、ためになることをはじめよう~
でっもっ!ためになることは、あっあ、なんてくだらない~

そうです、その歌詞。あなたはこういった循環っぽい論法みたいの、好みですよね。循環することで出口をふさいでしまう形式というんですかね。

よくわかるね。正解っ!ビンゴ。けっこうちゃんと聴いてきてくれたもうたもんだね。
早川義男のマネですね、と言わないあたりに優しさを感じちゃう、イヤ~ン。
キミには、すっかり見破られたぞなもし。

いえ、見破るというほどの・・まず最初に目についたトコなので。
バダさん、ヘンなしゃべり方はやめたら・・

循環っぽいの、好きだよ。
循環っぽいの、好きナリ・・・

2回言わなくても・・・でも、あっさり認めましたね。こういうの指摘すると気を悪くなさる向きもありますが。 そういう歌詞、または論法は、意識してのものでしょうか?

そりゃ意識はするだろ、意識してない歌詞なんてあるの?

ええと、意識というか、バダさんが歌詞を作る過程で、どの程度、最終形をにらみながら・・

循環っぽいの、好きだよ。
悪循環っぽいの、好きだっちゃ

あの、それはわかりましたから・・

今おもいついたもんでね。循環を悪循環に変えたよ。進化だ。

たはっ・・
すいません、悪循環に変わった事に気づきませんで・・
でも、なんとなくわかってきました。バダさんの歌詞は、そういったノリで・・

いわゆるそうゆうノリだ。

もう説明不要ですね。う~ん、でもこれじゃ話が終わっちゃうなあ・・
では、冷静になって考えてみて、循環が悪循環に変わることの、それが、その・・
そんなに面白いですか?

さあね。

すいません。いえ、あの、けなしてるわけじゃないんですよ。
よく、そんな細かいことを面白がれるなあ、と。

じゃあ、キミは面白くないってわけだ。

いえいえ、私個人としては、なかなかだと思いますよ。え~と、たとえば、
循環がエコロジーブームだとして、それが度を越えて強迫観念みたいのになって、これはどうなのか・・
みたいに持っていけば、説得力も、なきにしもあらずと・・

いいんだよ、そんなムリに合わせてくれなくても。
キミはおれじゃないんだからね。他者としてふるまってくれたまえ。

はい、そう心がけます。しかしですね。ここ最近はずっとバダさんの曲を聴いてたのですから、
少なからず、影響を受けたこともたしかなんですよ。

はは、キミもなかなかうまいね。自尊心をくすぐるのが。

そんなつもりじゃないです。とにかく私の目的は、バダさんに気持ちよく話してもらって、
実のあるインタビューを残したいのですよ。

じゃあ何の話をする?

循環と悪循環という循環を飛び出したところで話を進めてみましょうか。

お、なんかオレみたいだな、その・・展開

単なる入れ子構造じゃないすか。バダさんはそうゆうとこにもいちいち深遠を見てしまうようですね。

深淵ってゆうか、サガだな。シーケンサーとかリズムマシンとか使う人にとってのサガ。

と、言いますと?

わかるだろ、4つの音があって1つのパターンがあって、そのパターンを4つまとめて、もひとつ大きいパターン。 順繰りにこの調子で大きい構造を作ってゆく作業とかやるじゃん。

なるほど。入れ子ですね。でも思ったよりあたりまえの話ですね。

そうだね、シーケンサーとかリズムパターンとか言えばミュージシャンっぽい物言いになると思ったが、
そもそも世界はそんなものだらけだな。原子とか。

見渡す限り原子ですよ。おや、どうやらバダさんも原子のようですね。

キミにはおれが原子に見えるようだが、それはキミがおれを原子にカテゴリーしたからだよ。

なるほど。おや、今度はバダさんが波動に見えてきましたよ。

おれには、おれの目の前にいるカタカナの字が書いてあるTシャツを着た中年インタビュアーしか見えないがな。

このTシャツいいでしょう?

うん、欲しいね。「マ」って書いてあるやつがいいな。

では、次回は持ってきて差し上げます。

ありがと。楽しみにしてる。

なんかバダさんクールダウンしてませんか?
最初はヘンなしゃべり方して芝居がかってたのに。

そうかえ?
いや、なかなかトゲオの話が始まらないなと思って。

このインタビューはトゲオのサイトに掲載予定ですもんね。
これから、たっぷりと聞かせてもらう予定です。

よし、じゃ、ちょっとションベン・・・

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珍念与八郎::元ハナたれ小僧。
今はさすらいのインタビュアー。
どんな対談相手にもシンクロ率を
最大化してしまう。

馬田三朗::言わずと知れた
トゲオのボーカリスト

青い文字(珍念のセリフ)

赤い文字(馬田のセリフ)

★目次★
VOL.1 原子たちの総括
VOL.2 その程度と言われて・・
VOL.3 噴飯のカレーライス

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